奨励会ってどんなところ?
こんにちは。管理人のときんです。
研修会と奨励会では具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、神秘のベールに包まれた「奨励会」についてまとめてみました。
奨励会に興味のある方、奨励会を目指している方、今後入会試験を受ける方のご参考になれば幸いです。(※こちらの記事では主に15歳以下、級位者を想定しています。)
※2024年7月17日追記
研修会と奨励会の違い
棋力
研修会は一番下のFクラスでアマ二段と言われています。必要とされる棋力を満たし、入会テストを受ければ誰でも入会できるのが研修会です。
入会する方の動機も、女流棋士やプロ棋士を志望する子ばかりでなく、趣味で楽しむ子まで様々です。
対して奨励会は、研修会でA2まで昇級するか、毎年8月に行われる奨励会試験を突破した者だけが入会できる難関です。入会希望者は当然プロを目指している子ばかりの厳しい世界です。
1番下の奨励会6級で必要とされる棋力は連盟の募集要項でも三~四段、実際のところはアマ四~五段と言われています。
管理人の周りの奨励会員の方々の棋力から推察するに、6級の棋力は、24のレーティングで2400~2500、将棋ウォーズ3切六段以上、81で六段以上、アマレンレーティングで2000以上が目安ではないかと思います。
身分証
研修会には会員証がありますが、奨励会にはありません。
研修会の場合は、会員証提示で道場に入場できるため、実務的な役割が大きいです。
奨励会では胸元に門下名の入った名札をつけますが、それが身分証代わりとなります。(入会からおよそ2カ月くらいで手元に届くようです。)
例会の違い
持ち時間の長さが全く違います。
研修会が30分、切れたら1手60秒であるのに対し、奨励会は60分、切れたら1手60秒。より深く、じっくりと考える将棋になります。
持ち時間が長くなるため、例会の対局数は、研修会4局に対し、奨励会は3局(級位者)と少なくなり、1局1局の重みが増します。
集合時間も、研修会の9時半より1時間早い8時半となります。
また、研修会は地域によっては椅子対局ですが、関東奨励会では和室で正座の対局になります。
服装も普段着から制服やスーツになります。
雰囲気の違い
研修会では、プロを目指す子も、習い事の延長線上の子も同列で、休憩時間や感想戦は和気あいあいとしていますが、奨励会はプロを目指す子たちばかりの集まり。対局室はピリピリとした緊張感が漂っています。何かあれば幹事の先生も厳しく叱責・指導します。
8月の奨励会を受験する子たちの中には、この重い空気感に堪えられず体調を崩したり、緊張のあまり力を出し切れない子もいます。
アマからセミプロへ
奨励会に入会すると、アマチュア大会には参加できなくなります。
そして仕事として記録係や指導を行うこともあり、報酬が発生します。
※記録係は関東奨励会も関西奨励会も高校生以上となっています。
奨励会入会にあたって
関東or関西?
研修会では所属する研修会を自由に選ぶことができました。例会ごとに振替制度もありました。
奨励会では、関東奨励会と関西奨励会、どちらに所属するか、入会希望者は選択できるのでしょうか?答えはNOです。
原則として、静岡以東の在住者は関東、愛知以西の在住者は関西に所属となります。
西高東低
※後日改めてまとめます。
師匠をお願いする
入会申込書には師匠の記名、押印が必要です。つまり、プロ棋士の方に師匠を依頼しな
くてはなりません。
師匠は稽古をつけてくれるのか
これは師匠となった先生の方針によります。
全く指していただけない方、オンラインや対面で面倒見てくださる方、一門で定期的な研究会を開催する方等々様々です。
弟子入りする前に、兄弟弟子に先生の方針を確認する方がベターです。
必要書類
師匠の記名押印した入会申込書。このほか、記録係の仕事にかかわること、例えば本人の携帯番号、メールアドレス、口座登録、マイナンバーカードや保険証の写し、住民票写し等といったものが求められます。
※8月に奨励会を受験する場合は、受験の申請時点で入会申込書に師匠から承諾を頂く必要があります。遅くとも募集要綱が発表される7月上旬までには師匠を決めておきたいですね。(受験時点ではマイナンバーや口座情報は不要です。)
費用
奨励会はセミプロ扱いとはいえ、月謝はしっかりかかります。
・入会金10万5000円
・年会費12万6000円
・棋譜データベースの会 入会金2万円、年会費2万5000円(加入する場合)
初年度に係るお金は計27万6000円、一括払いです。(年会費は入会時期によって変わります。半期6万3000円です。)※2024年4月時点
※途中退会しても年会費等の返金はありません。
※カード払い不可です。
初年度計約30万円と師匠にお渡しするお金を合わせると、かなりまとまった金額が必要になります。
さらに地方から通う場合は交通費、場合によっては宿泊費がかかります。
このほか、細かな出費として、本人の携帯電話を契約する、小学校高学年なら中学の制服を前倒しで新調するなど、関連経費もかかります。
かつては将棋連盟に宿泊させてくれることもあったようですが、原則、例会の宿泊先は参加者が用意することになっています。
奨励会の例会
開催日
第一、第三日曜日開催が多いですが、土曜日開催のこともあります。
関東、関西、二段以下、三段で開催日が異なります。
9月には奨励会トーナメントも開催されます。
開始時間
研修会よりも早い8時半集合、9時開始となるため、遠方から参加する場合は前泊する必要があります。
欠席の場合は当日8時半までに幹事に連絡を得て承認を得る必要があります。
無断欠席は1局目不戦敗となります。
8月の入会試験も同様です。対局相手にとっては例会の1局なので、当然ですが、遅刻は厳禁です。
※盤駒当番となった場合は集合時間が7時50分となる上、最後の対局が終わるまで、つまり三段リーグの終了時間まで待機する必要があります。(かなり遠くから通っている場合は、幹事の計らいで早めに帰宅させてもらえることもあります。)
このほか対局が長引いた場合、お住いの地域によっては後泊の可能性もあります。
将棋の内容
奨励会に入会すると、研修会以上にライバルを意識することになります。
1例会あたりの対局数も減るため、昇級をめぐってよりシビアな戦いになります。
将棋の内容も、自ずと相手の手を潰すような、厳しい勝負になっていくようです。
また、研修会以上に1クラスあたりの人数が絞られてくるため、同じ人と当たる間隔が短くなり、より相手に研究される可能性が高くなります。
この他、特に注意しなくてはならないことは、持ち時間の使い方です。奨励会では、時間を余して負けることはご法度です。
注意点
基本的な挨拶、時間厳守とあわせて奨励会で注意すべき点は上下関係の礼節です。
着座するときは目上が上座、自分は下座へ。
駒箱を開けるのも、王将を取るのも目上です。
下手は、上手が駒箱を開けて玉将を取り、並べ始めるのを待ってから自分が並べます。
服装
襟付きシャツに長ズボン、学校の制服が基本です。名札を着用、素足はNGです。
ルール
①振り駒
東海研修会では対局者同士、関東研修会では第三者が振るなど、研修会ごとに振り駒のルールは微妙に異なっていますが、奨励会では第三者が振ると決まっています。(隣の人にお願いします。)
たまに先手が出るよう振り駒の練習をする人がいますが、この仕組みでは無意味ですね。
②持ち時間
級位者は60分、切れたら1手60秒の長い持ち時間の将棋になります。
遅刻した場合は、1倍で持ち時間が減らされます。
60分以上の遅刻は不戦敗です。
※千日手・持将棋の指しなおし局の持ち時間は残り時間を引き継いで行います。
③手合い
同級同士の場合は平手、先後については、対局ごとに交互になります。
※千日手・持将棋の指しなおし局は、先後に関しては1局とみなされます。
1級差については、振り駒によって、上手は左香落ちまたは後手になります。つまり、左香落と平手下手先手番を繰り返す形になります。
2級差は定香落ちとなります。
※1級差、2級差とも、千日手・持将棋となっても手合い割は変わりません。
3級差以上の手合いは基本的に組まれません。
④スマホなどの電子機器
ロッカーは無いので、対局中は電源を切りバッグの中へ。例会の対局がすべて終わるまで絶対に触れないようにします。
研修会では、休憩時間や対局待ちの間に、タブレットで将棋ウォーズを指したり、ぴよで棋譜を入れたり、割と皆さん自由に電子機器に触れていますが、奨励会ではNGです。
昼食
昼食は弁当が支給されますので持参する必要はありません。
また、支給された弁当を必ず食べなければならない決まりもないため、食べないのも自由です。気分転換のため、あえて自分の食べたいものを持参する人、外食に出る人もいます。
盤駒当番
入会して当面の間は、盤駒当番が回ってきます。当番の集合時間は前述のように7時50分ですから朝早く、夜遅いです。当番は、皆が対局しやすいよう、盤、駒台等の高さが揃うように確認しながら配置します。地味ですが、これも大切な仕事です。
休会について
研修会では休会制度がありましたが、奨励会に休会制度はありません。
3回以上続けて例会を欠席する場合は、傷病以外の理由は認めらておらず、長期休会の場合は師匠から連盟に申請をして承認を得ることになっています。
学校生活との両立
多くの奨励会員にとっての問題が、学校との両立です。
棋士を志した時点で高校進学を諦めた時代とは異なり、今は多くの奨励会員が学業との両立をしています。プロになれなかった場合のリスクを考えると、これは当然の成り行きかと思います。
学校の勉強と将棋の両立が大変であることは言うまでもなく、とりわけネックとなるのが奨励会が課外活動として認められるのかという点と出席日数の問題です。
奨励会は課外活動として認められるのか
例会は土日に開催されるものの、記録係の仕事など平日に学校を休まざるを得ないことも有ります。
あまりに欠席が多いと進路に影響するため、進学(特に推薦での進学)を希望する方は、奨励会が課外活動として認められるのか、ひいては対局や記録係の仕事が公休扱い或いは出席扱いとなるのかについて、予め学校側に確認しておく必要があります。この辺り、やはり公立よりも私立の学校の方が柔軟に対応してくれるようです。
一方でコロナ禍以降の良い流れで、学校によっては、(帰宅できなかった場合に出先で)リモート授業を受ければ出席扱いにする、遅刻で途中から授業に参加すればOKといった方法を取ってくれるところもあるようです。
所属の証明
前述したように、奨励会員には会員証がありません。また、アマチュア大会に参加できないため、他の部活動のように大会成績を活動実績とすることはできません。
したがって、課外活動としての活動実績やその疎明資料について、不安のある方は予め学校側と協議しておくのが得策です。
<補足>奨励会退会後のアマチュア復帰については、以下のようになっています。
・級位者で退会、リーグ編入者→退会後直ちに復帰可
・有段者→退会した日から1年間出場不可
おまけ 研修会から奨励会に編入した場合
研修会の退会手続き
奨励会入会により自動的に退会扱いとなります。手続きは不要です。
研修会の残りの月謝と例会
第二日曜の例会で昇級した場合、第四日曜の例会はどうなるのでしょうか。
月謝は支払っているので、当然参加可能です。
しかし、関係者によると、ほとんどの人は参加しないとの話でした。確かに、参加した場合、「何しに来た」という痛い視線を感じそうです。
不参加でも第四日曜の月謝は払い戻しされません。奨励会の月謝に充当もされません。
まとめ
奨励会と研修会の違いについて、まとめてみました。
将棋を真剣に学ぶ場としては同じですが、アマチュアの延長線上の研修会と奨励会では、かなり様子が異なることがお分かりいただけたかと思います。
入会試験の具体的な注意点については別記事にまとめましたので、受験される方はこちらも併せてご覧ください。
奨励会の内実についてはたくさんの書籍があります。こちらもご覧ください。
中でも「奨励会~将棋プロ棋士への細い道~」は、元奨励会員で「サラの柔らかい香車」で文壇デビューをした橋本長道氏がまとめたもの。情報はやや古いものの、奨励会を目指す方必読の書です。
将棋の本はKindle Unlimitedにもたくさんあります。30日間の無料体験もあるので、お気軽に試してみましょう。
≫Kindle Unlimitedを30日間無料で試す!(公式サイト)