【実体験あり】将棋の奨励会の記録係の仕事内容を解説
こんにちは。管理人のときんです。
今回は、奨励会員の大切な仕事である記録係について、現役の奨励会員の方に伺ったお話をまとめてみました。
奨励会に興味のある方、観る将の方、ぜひご覧ください。
新たな発見があるかもしれません。
奨励会の記録係とは?
順位戦、タイトル戦の予選といったプロ棋士の対局の対局準備、持ち時間の管理、棋譜を取るといったことが記録係の主なお仕事。
今は棋譜用紙に手書きではなく、タブレットに棋譜を入力する仕組みになっています。
タブレットから棋譜を入力し、サーバーにそのままデータ保存、最後に棋譜用紙を印刷、さらに手書きした棋譜用紙を一式作成し、終了です。
※タブレットで管理しているため、十分に充電されていない状態で対局が始まると大変なことになります。電池の残量を確認しておくことも大事!
記録を取る対局は選べる?
どの対局の記録を取るかは、上の級の人から順番に選ぶ権利があるため、人気のある棋士は先に決まっていきます。下の級になると残った対局を割り当てられるため、基本選べません。
記録係の過酷な労働環境
記録係の仕事時間は?
どの棋戦か、対局者かによって変わります。
例えば竜王戦のケースでは、平均的に午前9時集合~21時終局(遅いときは22時終局)+感想戦で目安として12時間以上かかります。
順位戦はここから更に1~2時間ほど長くかかるそうです。
※持ち時間の長い順位戦は、朝番、夜番の交代制で、夕食休憩から後は夜番に代わります。
朝番の仕事は確実に夕食休憩までに終わりますが、夜番は何がおこるかわからないリスクがあります。
例えば実際に夜番をしたA君のケース。
対局者は将棋素人の管理人でも、「この人は長そうだ」と感じる某先生。
予想に違わず200手超えの熱戦からなんと持将棋。指しなおし局も150手を超え、終局した時には深夜2時半を回っていました。結局午前3時すぎに仕事を終えてそのまま連盟に宿泊。
午前4時就寝、午前11時に起床して帰宅したそうです。(帰宅といっても、徒歩や自転車でさっと帰れる距離ではないので、これもまたひと仕事ですね。)
一方、同日に別な対局の夜番を担当したB君は、夕食休憩から僅か15手で終局したため早々に帰宅。
このように、どの対局カードを引くかでも仕事の負荷が変わってきます。
因みに、今回のケースではB君の方が上の級だったため、B君から先に記録を取る対局を決めたそうです。何か薄々感じ取っていたのかもしれませんね。
報酬は?
拘束時間のわりに、びっくりするほど安いです。
有段者になると、報酬が「気持ち」上がります。
もしかして、ずっと正座?
ずっと正座をしているのはつらいので、途中から足を崩して胡坐を組むことが許されています。が、あまり早く足を崩すと幹事に叱られるため、通常は目安として30分~1時間は正座を保ちます。
トイレはどうするの?
対局の中継を観戦していると、「記録の方たちはトイレに行きたくなったらどうするんだろう?」と疑問に思いますよね。水分摂取を控えて、なるべくトイレに立たないに越したことはないのですが、生理現象ですから、そううまくいきません。
経験者の話では、対局者が持ち時間を使い切る前に「失礼します」といって済ませるのがコツだそう。(そして、間違っても秒読みに入ってから行ってはいけないとも。)
有段者と級位者で何が違う?
有段者になると、タイトル戦の記録係を務めることが出来ます。(ほとんどは三段の方、まれに二段以下。)地方都市で開催される場合には、その地方出身・在住の奨励会員が記録係を務めることもあります。
記録係のおきて
師匠など同門の先生の対局の記録係はできません。ただし、同門の先生同士の対局の場合は、記録係を務めることが出来ます。
おまけ
記録係のほか、塾生と呼ばれる仕事もあります。塾生は、新聞記事のスクラップ、先生方の食事の注文を取るといった細々とした作業を行います。
どちらかというと塾生は雑務やお世話係の要素が強いです。
かつて塾生は将棋連盟に住み込みでした。ある先生は、塾生時代、棋士の先生方が深夜まで麻雀をした後の、麻雀牌と汚れた灰皿の片づけがとても苦痛だったそう。棋士なら将棋の勉強をしろと、腹が立って麻雀牌をこっそり捨てたと話してくださいました。
最後に
近年は、abemaの中継などで、記録係の方が注目を浴びる機会も増えてきました。
記録係は陰の立役者と言えるかもしれません。
目立たず地味な仕事ですが、対局になくてはならない大切な仕事です。
観戦の機会がありましたら、推しの先生と併せて、ぜひ記録係の方も応援してあげてください!
こちらは渡辺明先生の奥様・伊奈めぐみ先生が描くノンフィクションマンガ。
渡辺先生の奨励会時代のエピソードや記録係の時のお話もあります。