こんにちは。
日本将棋連盟公認、将棋普及指導員のきゃべ夫です。
最近は、藤井聡太先生の活躍を見て、将棋を自分の趣味にしたい、あるいはお子さんに教えてみたいと考えている方が増えています。
図書館や書店で、将棋の入門書を手に取ってみた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、将棋の入門書の中には、いきなり駒の動かし方などのルールから紹介しているものも少なくありません。
また、藤井ブームで注目される「知育・教育としての効果は?」という点も、残念ながらあまり情報は多くないのが実情です。
この記事では、ルールなどの入門以前の知識として、将棋とはどのようなゲームなのか?を解説していきたいと思います。
- 自分で将棋を始めてみたいけど、そもそも将棋がどんなゲームなのかをよく知らない方
- お子さまへの教育・知育の一環として将棋を始めさせてみたい方
将棋は、2人で行う頭脳ゲーム
将棋を一言で表す言葉は意外に多く、「戦のゲーム」「戦略ゲーム」などと色々な言い回しが使われているようです。
私が一番しっくりくると思う表現は「頭脳ゲーム」です。
また、将棋は1対1の2人で行うゲームである点も最初に押さえておきましょう。
基本的には頭を使って行うため、年齢・性別・国籍などに関係なく誰とでも楽しむことができるゲームです。
盤の上で駒を動かし、相手の王将を討ち取る
将棋の目的は、相手の王将(玉将)を討ち取ることです。
将棋は、「将棋盤」と呼ばれる、81マス(9×9)の盤の上で、8種類の駒を用いて行います。
それぞれが、交互に駒を動かす、取る、打つ、成る(簡単に言うと”進化する”みたいなもの)などの手を指して進めます。
扇子くん
きゃべ夫
礼儀作法の世界
- 対局を開始するときには、相手の目を見て「お願いします」と言う。
- 負けたときには「負けました」と声に出して頭を下げる。
- 対局が終了したときには「ありがとうございました」と一礼する。
このように、対局の節目であいさつを交わす、礼節を重んじる競技なのです。
また、その他にも将棋の動作には、日本人として身に付けておきたい礼節が数多く含まれています。
下の図はその一例です。
アマチュアで、将棋の技術が上達してくると、この礼節がおろそかになってくる人も結構いるのですが、礼節は将棋の世界で根幹をなす重要な要素です。
将棋はインド発祥
将棋やチェスの元となったのは、インドの「チャトランガ」というボードゲームだという説が一般的です。
これが陸路・海路を経て各国に伝わったんだとか。
なんともロマンチックですね。
ただ、チャトランガがいつ頃誕生したのかは定かでなく、紀元前後の何世紀か、という以上には細かな時期は絞れないのだそうです。
ともあれ、インド発祥のゲームが東に伝わって日本にも持ち込まれたと考えておいて問題ないでしょう。
遅くとも11世紀には指されていた!
では、将棋はいつ頃から日本で指されていたのでしょうか。
実は、はっきりとしたことは分かっていません。
遣隋使や遣唐使を派遣していた時代からあったという説もありますが、それを正しく裏付ける事実はありません。
ただし、天喜6年(1058年)と書かれた木簡とともに王将・金将の駒などが出土していることから、遅くとも11世紀には将棋が指されていたと考えられています。
現代とルールの違いはあるものの、王将・金将の動き方は現代と変わらなかったようです。
同じようなゲームが1,000年も前から楽しまれているって、すごいことですよね。
教科書に載っている歴史上の偉人たちも、我々と同じように将棋で遊んでいたのかもしれない、と妄想するだけでも楽しいですね。
日本独自のルール
ところで、日本の将棋では取った相手の駒を自分の駒として使えます。
それは将棋のルールを細かく知らなくても、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
実はこの「持ち駒再利用」は日本独自のルールです。
例えば、チェスではそのようなルールはありません。
(そもそも、プレイヤーごとに駒の色が分かれていますからね)
この独自の「持ち駒再利用ルール」こそが、将棋の可能性を大きく広げ、ゲームとしての深みを増した工夫なのです。
しかし、このルールもいつ頃から存在するのかは諸説あります。
ただ、いずれの説でも、江戸時代に入る17世紀までには浸透していたと考えられているようです。
将棋の近現代史は、非常に面白いテーマなので、このブログでもいずれ扱っていきたいと考えています。
知育・教育でも注目?
ここ10年くらいでしょうか。
将棋=知育・教育の面でも有用、という見解を色々なところで目にするようになりました。
特に、藤井聡太先生の活躍が世間一般にも広く知られるようになってから、その傾向は顕著で、「将棋=教育に良い、頭がよくなる」と広く認識されるようになってきた気がします。
確かに、知育・教育面でも良い効果はあると思います。
特に、算数や数学の成績に良い影響を与えるケースは多いようです。
将棋の「頭の中で駒を動かす思考」と、算数・数学の「頭の中で数字や式を動かす思考」は似ています。
また、公式や定理、過去の問題のパターンを覚える動作も、将棋にそのまま現れます。(将棋だと「定跡」や「過去の実践例」を覚える動作)
私が将棋を指導している生徒さんの中にも「将棋を始めてから算数が好きになった」という方は多くいらっしゃいます。
なお、将棋が持つ教育的な効果については、日本将棋連盟Webサイトで専門家がコラムを寄稿していますので参考にしてください。
参考 安次嶺隆幸氏の将棋コラム日本将棋連盟Webサイトただし、「将棋を指す=すぐに学校の成績も上がるはず!」と短絡的に考えてしまうのはNGです。
そもそも、頭が良い=学校の成績が良いということではないですし、将棋で培われるのは「集中して論理的に物事を考える力」であり、いわば勉強をする土台となる能力です。
土台を作ることと、それを活かして実際に勉強をすることは別物です。
子どもに将棋を始めさせたいと考えている保護者の方は、その点は理解していただいた方が良いと思います。
ただ、学校の勉強も将棋も「自発的に学ばないと成長しない」と言う点は共通しています。
例えば、本当は勉強が好きではないのに、小学校から学習塾にすし詰めで勉強をさせられてきた子どもは、高校受験くらいまでは乗り切れても、その後、高確率で息切れします。(数学IAあたりで)
よく考えたら当然のことです。
考えること自体が好きではないのに無理矢理やらされているから、長続きするわけがないのです。
しかし、将棋をある程度続けていれば、「忍耐強く考えることが苦でなくなる」傾向は確かにあります。
将棋では、棋力(将棋を指す力)の向上に伴って、集中力も身に付いていきます。
短絡的には結び付けられないものの、「将棋は勉強にも役立つ」といって間違いではないでしょう。
なお、私は頭脳を鍛えること以上に、人としての礼節を学べることが、将棋を通じて得る本質的な財産だと考えています。
先ほど述べた「礼に始まり礼に終わる」という文化、そして勝ち負けがはっきりと分かれるシビアなゲーム性が精神を鍛える、この要素を重視しています。
話が少しそれましたが、いずれにしても、やっていて損になることはまずないと断言できる素晴らしい趣味です。
おわりに
今回は、将棋入門の以前に知っていただきたい「そもそも将棋とはどんなゲームか?」ということをお伝えしました。
次回は、将棋を指すために必要な道具をご紹介して参ります。