銀河戦のちょっとマニアックな考察をしてみた!

こんにちは。将棋普及指導員のきゃべ夫です。

以前、別記事で公式戦の1つ「銀河戦」の仕組みをご紹介しましたが、今日その続編として、過去の銀河戦の記録を基に、以下2つのテーマを検証していきたいと思います。

  • テーマ1:最終勝残者VS最多連勝者。どちらが上位に進出しているのか?
  • テーマ2:本戦トーナメントは、どの位置が決勝トーナメントに進出しやすいのか?

銀河戦が現行のスタイルになってから18期分(第10期~第27期)のデータを分析した結果をお届けします。ぜひご覧になってください。

関連記事

こんにちは、日本将棋連盟公認の将棋普及指導員をしております、きゃべ夫と申します。今回は、プロ棋士の公式戦の1つである「銀河戦」の仕組みや楽しみ方について解説します。銀河戦は、ケーブルテレビの「囲碁・将棋チャンネル」が主催する早指し棋戦で[…]

テーマ1.最終勝残者VS最多連勝者。どちらが上位に進出しているのか?

銀河戦の紹介記事でもお伝えした通り、銀河戦は8つに分かれた本戦トーナメントから、それぞれ「最終勝残者」「最多連勝者」の2名が決勝トーナメントに進出する仕組みになっています。

最終勝残者は、トーナメントの右側にシードされたトップ棋士がなるケースが多いです。

そのため、最終勝残者の方が、決勝トーナメントの中でもより上位に進出していることが予想できますが、果たしてどうなのでしょうか。

下は、銀河戦が現行のシステムになった第10期(2002年度)から、第27期(2019年度)までのベスト4以上の進出者を表にまとめたものです。表の青い部分が「最終勝残者」、緑色の部分が「最多連勝者」です。

きゃべ夫
全体的に青い!やはり、トップ棋士の壁が厚いということだね。
銀将くん
最多連勝者が優勝したのは18年で3回かあ…。ん?第13期の渡辺竜王は最多連勝者なの?竜王なら本戦トーナメントは右端から出場し、最終勝残者になるのでは?
きゃべ夫
本戦トーナメントの抽選時には、まだ渡辺五段だったんだ。だから、出場位置がそこまで右ではなく、4連勝して最多連勝者として決勝トーナメントに進出したんだ。

上の棒グラフを見てお分かりの通り、ベスト4以上は、およそ8割を「最終勝残者」が占めています。「最多連勝者」が優勝したケースは、以下の3回のみです。

第13期(2005年度):渡辺明竜王
第17期(2009年度):阿久津主税七段
第21期(2013年度):稲葉陽七段

また、早指し棋戦であれば、若手棋士が活躍するケースもよくあるものの、銀河戦では総じてトップ棋士の壁が厚い傾向にあるようです。

現行のシステムになってからの18年間で、ベスト4以上に四段の棋士が進出した例は、第18期(2010年度)の中村太地四段(ベスト4)のみです。

テーマ2.本戦トーナメントは、どの位置が決勝トーナメントに進出しやすいのか?

現行の本戦トーナメントは8ブロック×12名で行われます。
私は以前から、12名が横に並んだトーナメント表を見て感じていたことがあります。

きゃべ夫
「本戦トーナメントでは、やや右側の位置から出場する棋士(上図の4~5番あたり)は決勝トーナメントに出にくいのではないか・・・?」

なんだか出にくそうに見えるんです。

最終勝残者になるには、上位の棋士を何人も倒さないといけないし、左の方で連勝を重ねる棋士が割とよく出るので最多連勝者にもなりにくい。そんな気がしていました。

今回、どの位置が最終勝残者・最多連勝者になりやすいのかを検証してみました。

(前提)
・現行のシステムで行われている第10~27期を対象に分析する
・本戦トーナメントのうち、最も右側の枠を1番とし、以下左にいくにつれて2番、3番、…12番と定義する

まずは最終勝残者の分析結果から見ていきましょう。

本戦T出場位置別の「最終勝残者」人数(第10~27期)

上のグラフは、横軸に本戦トーナメントの出場位置を、縦軸にその位置から「最終勝残者」になった人数を示したものです。

予想通りと言いますか、1番で出場している棋士が圧倒的に多く「最終勝残者」になっています。(1番で出場している棋士は1勝すれば決勝トーナメントに進出できます)

調べたら、なんと本戦トーナメント8ブロック全てで、1番の棋士が最終勝残者になった年もありました!(第15期(2007年度))

ここからも、トップ棋士の壁の厚さが感じられますね。

最終勝残者は、1番の棋士から、左にいくほど出場者が少なくなりますが、過去には6~8番の棋士が「最終勝残者」になったというケースもあります。

それは以下の5棋士です。(段位はいずれも当時)

6番から最終勝残者になった例
第24期(2016年度):中村太地六段
第25期(2017年度):船江恒平五段

7番から最終勝残者になった例
第12期(2004年度):渡辺明五段
第21期(2013年度):糸谷哲郎六段

8番から最終勝残者になった例
第14期(2006年度):北島忠雄六段

銀河戦が現行のシステムになって以来、「トーナメントの最も左側から最終勝残者になった棋士」は、第14期の北島忠雄六段(当時)です。

このときは、川上猛五段、神崎健二七段、中田宏樹七段、杉本昌隆六段、佐藤秀司六段、島朗八段、三浦弘行八段、森内俊之名人を相手に8連勝し、決勝トーナメントに進出しています。

なお、北島六段が連勝を重ねてそのまま決勝トーナメントに進出したため、このブロックの最多連勝者は川上五段(2連勝)になりました。

北島六段‐川上五段戦の前節は川上五段‐矢倉六段戦でしたが、このとき、もし矢倉六段が勝利していたら、矢倉六段が『連勝しなかったのに「最多連勝者」として決勝トーナメントに進出する』という珍しい事象が起きていました)

北島先生は銀河戦との相性がよく、決勝トーナメントで羽生善治名人(当時)を破ったこともあります。(第17期(2009年度))

本戦T出場位置別の「最多連勝者」人数(第10~27期)

続いて、最多連勝者の分析結果を見ていきましょう。

上のグラフは、横軸に本戦トーナメントの出場位置を、縦軸にその位置から「最多連勝者」になった人数を示したものです。

結構ばらついていますが、6~9番で出場した棋士が、多く最多連勝者になっているようですね。ちなみに、選出の仕組み上、1番が最多連勝者になることはありません。2番も、ほとんど無いと考えてよい確率です。

分析する前は、もっと左側(10~12番あたり)が多いのかと思っていました。先日、プロ編入試験に合格した折田翔吾新四段や、アマチュア時代の瀬川五段・今泉四段の活躍が強く印象に残っていたからでしょうか。(アマチュア選手は、必ず12番から出場する)

本戦T出場位置別の決勝T進出人数(第10~27期)

それでは最後に、最終勝残者と最多連勝者を合算したグラフを見てみましょう。

最終勝残者・最多連勝者合算で見ても、やはり圧倒的に、1番から出場する棋士が多く決勝トーナメントに進出しています。

そして、検証前のきゃべ夫の仮説もまあまあ当たっていそうです。

第10~27期の18年間においては、『3番~5番から出場する棋士よりも、6番~9番で出場する棋士の方が、最多連勝者になるケースが多い分、比較的多く決勝トーナメントに進出している』と言えます。

おわりに

銀河戦は色々な切り口で分析ができる面白い棋戦ですね。

まだ気になるテーマもあるので、またの機会にご紹介します。

やや長い記事でしたが、お付き合いいただきありがとうございました!

きゃべ夫が発信する最新情報をチェックしよう!