私が子どもだった20年くらい前、たまに「プロ棋士は左利きが多い」と耳にすることがありました。
確かに、当時は、久保利明八段や鈴木大介八段といった、左利き×振り飛車党の棋士がA級でばりばり活躍していました。(もちろん今もご活躍されていますが)
久保先生や鈴木先生が、左手で振り飛車の将棋を指す姿がとてもかっこよく映ったことを憶えています。
また、ニュートンやアインシュタインらの偉人が左利きだったと伝えられることからも、「棋士=インテリ=左利きが多い」という方程式が、私の頭の中にありました。
しかし、私は不勉強で、それがホントに正しいのかを検証していませんでした。
そもそも、当時は今みたいにネットで検索すれば何でも出てくる時代ではなかったので、調べきれなかったような気もしますが…
そこで、今回は「棋士は左利きが多いのか?」を検証してみました。
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検証結果
まずは結論からお伝えします。下の表をご覧ください。
扇子くん
棋士全体だと左利きは172人中、17名で約9.9%を占めるんですね。
これって世間よりも多いんですか?
きゃべ夫
人類全体の左利き割合は約10%と言われています。
残念ながら、棋士全体では、左利きが多いとは言えないですね・・・
扇子くん
そんなぁ・・・せっかく「棋士=インテリ=左利きが多い」って思ってたのに!夢が壊れた気分ですよ!
きゃべ夫
まあ落ち着いて、段位別に分析しましょう。
扇子くん
トップ棋士には左利きが多いんですね!
これはアツいです!
棋士全体ではそれほど左利きは多くないものの、八段・九段の棋士は左利きが多いという検証結果が得られました。
また、左利きの棋士には中堅~ベテラン勢が多く、若手棋士(30歳前後あたりまで)が少ないようです。
子どものころに利き手を矯正される人は年々減っており、若い世代には割と左利きがいるのでは?と考えていたので、やや意外でした。
左利きの現役棋士一覧
ちなみに、今回「左手で将棋を指している」ことを確認できた棋士は以下の17名です。
九段 | 小林健二九段、南芳一九段、塚田泰明九段、久保利明九段、 行方尚史九段、鈴木大介九段 |
八段 | 畠山鎮八段、畠山成幸八段、北浜健介八段、山崎隆之八段 |
七段 | 平藤眞吾七段、飯島栄治七段、戸辺誠七段 |
六段 | 金井恒太六段、村田顕弘六段、青嶋未来六段 |
五段 | 竹内雄悟五段 |
四段 | 無し |
全棋士の画像・映像を確認したつもりですが、間違ってるぞ!という箇所があればご指摘いただけると嬉しいです。
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検証の前提
今回は、以下の前提で検証を行っております。
- 2020年10月1日現在、現役棋士として日本将棋連盟Webサイトに掲載されている棋士(172名)を対象に調査
- 「左利きの棋士」とは「左手で将棋を指している棋士」と定義
(箸などの日常生活では右手を使っていても、左手で将棋を指していれば左利きとカウント)
また、本検証では、検索エンジンを用いて画像・動画を検索し、棋士本人が将棋を指している姿(棋戦やイベント、指導対局、検討風景等)を目視し、利き手を確認しております。
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おまけ:テニスの世界と比べてみた!
話は変わりますが、「左利きが有利とされる世界」といえば、何を思い浮かべますか?
私は「プロテニスプレイヤー」を思い浮かべました。
テニスは、ボールの回転が逆になる、クロス方向にショットを放てば右利きの相手のバックサイドを突けるなど、左利きが有利な要素が多い競技です。
そこで、先ほどの検証結果をテニスの世界と比べてみました。
将棋の九段およびタイトル保持者・永世称号有資格者は合計33名。
これにあわせて、テニスの世界ランキング(最新)の上位33名の中に、左利きの選手が何名いるかを調べました。
その結果…
- ラファエル・ナダル(2位:スペイン)
- デニス・シャポバロフ(11位:カナダ)
以上、なんとわずか2名でした。
しかも、「左利きのアスリート」としておそらく世界一有名なナダルも、日常生活は右利きです。
テニスで有利になるからという理由で、コーチを務めるおじが、幼少期に左打ちに矯正したという説もあります。
(本人はこの説を否定しており、勝つために自然と左打ちになったという見方もありますが、いずれにしても生来は右利きであることに変わりはありません)
あれだけ「左利き有利」と言われるプロテニスの世界より、トップ勢の左利きが多いのですから、やはり将棋の世界は左利きが有利なんだろうということで結論付けたいと思います。
ちょっと強引な理屈だと思いましたか?
でも、私としてはそう思いたいんです。
実は私も左利きなので。
それでは、また次回も読んでいただけると嬉しいです!