こんにちは。
日本将棋連盟公認、「将棋普及指導員」のきゃべ夫です。
アマチュア級位者の私の生徒さんの将棋を題材に、アマチュア初段を目指す上で重要な、「ミスを減らすためのポイント」をご紹介する「実戦ワンポイント!」。
今回から具体的なポイントのご紹介を始めます。
本連載の趣旨や、生徒さんのプロフィールについては、こちらの記事をご覧ください。
[sitecard subtitle=関連記事 url=https://cabbage-shogi.com/onepoint-guidance/]今日のテーマは「振り飛車に対する囲い方」です。
それでは、早速始めていきます。
振り飛車に対して矢倉はイマイチ
記念すべき第1局目の題材は、Kさん(手前側)の振り飛車に対して、後手が矢倉囲いに組んだ局面です。
下の第1図は、お互いが玉を囲い合う「序盤戦」が終わり、駒がぶつかる「中盤戦」にそろそろ差し掛かろうかという局面です。
第1図:▲3六歩まで
ちなみに、この直前に指された▲3六歩は好手です。
5九にいる先手の角があまり働いていない局面でしたが、▲3六歩と突くことで、▲3七角や▲2六角と上がる(角を転換する、といいます)手が生じます。
大駒の働きを高める(行ける場所を増やす)手は基本的には良い手です。
話を戻します。
この第1図、AIの評価では互角らしいのですが、アマチュアの将棋だと、既にやや振り飛車側が指しやすい局面になっています。
級位者の方には、「自分は矢倉が得意だから」とどんな戦型でも矢倉に組みたがる方がよく見られますが、振り飛車に対して矢倉囲いに組むのは基本的にはイマイチです。
少し理屈っぽくなりますが、その理由を説明します。
居飛車対振り飛車(対抗形といいます)は、下のイメージ1図のように、お互いの飛車が向かい合っている筋(7~8筋)で戦いが起こります。
イメージ1図
そして、戦いが起こった後は、イメージ2図のように進むことが多いです。
イメージ2図
お互いが飛車や角を敵陣に成り合い、桂馬・香車を取って横方向からお互いの玉を攻める展開になりやすいのです。
この横方向からの攻めに矢倉囲いは弱いのです。
美濃囲いと矢倉の基本的な特徴として、
- 美濃:縦からの攻めに弱く、横からの攻めに強い
- 矢倉:縦からの攻めに強く、横からの攻めに弱い
とうものがあります。
矢倉は3段目に金銀が2枚並び、縦方向の守りが手厚い囲いです。
しかし、2段目には金が1枚しかなく、横から攻略されやすい形です。
一方、美濃囲いは、1段目・2段目に金銀が並んでおり、横方向の守りが手厚い囲いです。
しかし、3段目に金銀は無く、縦から攻略されやすい形です。
なお、美濃囲いは、高美濃囲いや銀冠といった囲いに「進化」させることで、縦方向への守りも強化することができます。これは、別記事でご紹介します。
先ほど説明したように、居飛車VS振り飛車の対抗形では、お互いが横から攻め合う展開になりやすいので、横からの攻めに弱い矢倉に囲うのは合理的ではない、ということです。
実際、棋士・女流棋士の公式戦や、アマチュア有段者クラスの将棋には、振り飛車に対する矢倉はほぼ現れません。(対角交換振り飛車などの一部の例外を除く)
自分の好きな形にこだわって指すのも大切なことですが、理屈を無視して自己流をただ貫くだけでは、なかなか棋力は向上しません。(スポーツなどと同じですね)
振り飛車に対する居飛車の囲いは、
- 舟囲い
- 左美濃
- 居飛車穴熊
- elmo囲い
など、横方向からの攻めに強いものが選ばれることがほとんどです。
本ブログでも、主な囲い方については紹介していきたいと思います。
今回のワンポイントレッスンは以上です。
第2回は、この将棋の中盤戦を題材に「駒の交換」について解説しております。
[sitecard subtitle=関連記事 url=https://cabbage-shogi.com/onepoint-2/]ぜひあわせてご覧下さい!