こんにちは。
日本将棋連盟公認、「将棋普及指導員」のきゃべ夫です。
アマチュア級位者の私の生徒さんの将棋を題材に、アマチュア初段を目指す上で重要な、「ミスを減らすためのポイント」をご紹介する「実戦ワンポイント!」。
第25回のテーマは「相掛かりの超基本」です。
本連載の趣旨や、生徒さんのプロフィールについてはこちらの記事をご覧ください。

相掛かりの基本
今回は、Jさん(将棋ウォーズ2級;先手番)の実戦から。
お互いが飛車先の歩を突き合う「相掛かり」と呼ばれる戦法ですが、Jさんの▲2四歩は指してはいけない手です。
相掛かりの一番基本的な手なので、詳しく解説していきます。
第1図(▲2四歩まで)
まずは、実戦の進行を見てみましょう。
第1図以下の指し手(実戦)
△8六歩▲2三歩成△8七歩成▲2二と(第2図)
第2図(▲2二とまで)
お互い一歩も引かずにパンチを繰り出しましたが、第2図まで進むと先手が良さそうです。
先手と後手が全く同じように手を進めてしまうと、先に攻め込める分、先手が良くなるというのはイメージ的にもお分かりいただけるかと思います。
ただし、こう都合よくは進みません。
定跡手順を見てみましょう。
第1図以下の指し手(定跡)
△2四同歩▲同飛△8六歩(第3図)
第3図(△8六歩まで)
▲2四歩に対して、後手は△同歩と取るのが正しい対応です。
先に後手が一歩を手持ちにできるのですが、これが後から活きてきます。
▲2四同飛と取り返した手に対し△8六歩と突くのが定跡。
この後の進行も少し細かく見ていきましょう。
第3図以下の進行①
▲8六同歩△8七歩(第4図)
第4図(△8七歩まで)
素直に▲8六同歩と取ると、第4図のように△8七歩と打って後手が有利になります。
先手から仕掛けたはずなのに、後手からの角取り(△8七歩)が先に入っている点がポイント。
これでは、先に攻めた意味がなく、先手が失敗ですね。
▲2三歩△8七歩成▲2二歩成△同銀(第5図)
第5図(△2二同銀まで)
- 後手が歩を2枚得している(第5図は、先手が角を1枚得していますが、後手も角を取り返せる形です)
- 後手から角を打って攻める手がある(先手が何もしなければ「△3五角」と、飛車・歩の両取りに角を打つなど)
など、後手の方に良い要素が多い局面なのです。
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ここまで長々と解説してきましたが、結論としては第1図で▲2四歩と仕掛ける手は成立しないということです。
第2図のようにパンチを繰り出し合えば先手が良くなりますが、後手が正しく対応して第3図まで進むと、先手が不利に陥ります。
理屈っぽくて難しく感じるかもしれませんが、将棋の基本的な定跡なので、初段を目指す方は必ず身に付けましょう。
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先手は、第1図の▲2四歩に代えて、▲7八金(第6図)と指すのが定跡です。
第6図(▲7八金まで)

第7図(△3二金まで)

今回は「相掛かり」の基本的な定跡手順を解説しました。
相掛かりは他の戦法と比べると定跡が整備されておらず、アマチュアが指すこなすのが難しい戦法の1つです。
本格的に相掛かりを指してみたい方は、プロ棋士が書いた定跡書を読んでみるのも良いでしょう。
オススメは、相掛かりを得意としている中座真先生の「よくわかる相掛かり」です。
本記事で紹介したような最も基本的な定跡から、駒組み~戦い方まで、相掛かりの基礎が網羅されています。
次回は、戦法をガラっと変えて角交換振り飛車でよく見られる「逆棒銀」をテーマに扱います。ぜひ読んで下さい!
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