こんにちは。
日本将棋連盟公認、「将棋普及指導員」のきゃべ夫です。
アマチュア級位者の私の生徒さんの将棋を題材に、アマチュア初段を目指す上で重要な、「ミスを減らすためのポイント」をご紹介する「実戦ワンポイント!」。
第32回は「4枚落ち・棒銀の攻め方」です。
本連載の趣旨や、生徒さんのプロフィールについてはこちらの記事をご覧ください。

4枚落ちには棒銀
第1図は、Jさん(将棋ウォーズ2級)と私の駒落ち戦。
上手(うわて)の私が飛車・角・香を落とす「4枚落ち」という手合いです。
第1図(△7三桂まで)
下手(したて)のJさんは棒銀戦法を採用しました。
Jさんは、駒落ちの将棋はほとんど指したことがなく、定跡の勉強をしたわけでもないそうですが、4枚落ちに対しては棒銀で立ち向かうのがセオリーとされています。
また、下手は玉をしっかりと「カニ囲い」に囲っています。
定跡書では、4枚落ちまでは居玉で攻める指し方を紹介しているものが多いですが、私は第1図のようにしっかりと玉を囲う指し方をオススメしています。
4枚落ちで指導を受ける方の棋力はアマ3~4級くらいが多く、そろそろ初段を意識した将棋(玉をしっかり囲って戦う)を指すことが望ましいと考えるからです。
前置きが長くなりましたが、第1図からはどう上手玉を攻めますか?
少し考えてみてください。
第1図以下の指し手
▲1四歩△同歩▲同銀(第2図)
第2図(▲1四同銀まで)
実戦では、下手は1筋を攻めましたが、これは良い攻め方です。
4枚落ちは上手の香車が無いため、端の守備力が弱いのです。
相手の弱そうなところを攻めるのは、平手の将棋でも使える基本です。
第2図まで進むと、1筋・2筋を破れそうな局面に見えますが、それなりに精密な指し方が求められます。
第2図以下の指し手
△1三歩▲同銀成(第3図)
第3図(▲1三同銀成まで)
上手は△1三歩と銀を追い返そうとしましたが、構わず▲1三同銀成(第3図)と突進するのが良い手。
ここで銀を引いてしまうようではいけません。
第3図からの指し手
△1三同銀▲同香成△同桂▲1四歩(第4図)
第4図(▲1四歩まで)
下手は先に香を損しましたが、第4図は1筋が突破できそうな形です。
例えば上手が△1一香と打ってきたら、▲1八飛と端に攻め駒を足して、あくまで1筋を狙います。
上手は歩切れ(持ち駒に歩が無いこと)がつらく、下手ペースの中盤戦です。
◆
◆
◆
定跡の攻め方
上で紹介した第2図~第4図の攻め方でも下手が十分な形勢ですが、参考として定跡書に書かれている攻め方もご紹介します。
第1図以下の指し手②
▲1四歩△同歩▲1二歩(第5図)
第5図(▲1二歩まで)
飛車先交換で得た歩を使って▲1二歩(第5図)と垂れ歩を放つのが定跡です。
パッと見て何がやりたいのか分かりづらい手ですが、以下のような進行が狙いです。
第5図以下の指し手
△8四歩▲1四銀△1三歩▲2三銀成(途中図)△同銀▲1一歩成(第6図)
途中図(▲2三銀成まで)
第6図(▲1一歩成まで)
△1三歩と受けられた局面で▲2三銀成(途中図)と銀をタダ捨てするのが定跡。
△同銀に対して▲1一歩成と「と金」を作っておきます。
こうしておいて、次に▲2一と、と桂馬を取ってから▲1三香成と端を突破するイメージで攻めます。
ちなみに、▲2三銀成に対して△同金と取る手には▲2四歩(参考図)が激痛。
参考図(▲2四歩まで)
△同金は▲同飛と金を取り返せますし、△3四金と逃げると▲2三歩成として2筋を突破できます。
相手の金をナナメに誘うのがポイントです。
金はナナメ後ろには戻れませんので、相手の金をナナメ前に引きずり出すと攻めがうまくいきやすいのです。
以上が、定跡書に載っているような攻め方なのですが・・・私はあまりオススメしません。
▲2三銀成のように銀を丸一枚損をする攻め方が少し無理気味に感じるからです。
平手でこのように攻める定跡はほとんどありませんからね。
私は、上の第2図~第4図で説明した攻め方でも十分では?と考えています。