アマチュア級位者の私の生徒さんの将棋を題材に、アマチュア初段を目指す上で重要な、「ミスを減らすためのポイント」をご紹介する「実戦ワンポイント!」。
本連載の趣旨や、生徒さんのプロフィールについてはこちらの記事をご覧ください。

前回の講義で、Jさん(将棋ウォーズ2級)と私の実戦を題材に、2枚落ちの指し方を見ていきました。
2枚落ちは、上手の守備力がそれなりに高く、オリジナルの攻め方ではなかなか上手陣を攻略しづらい手合いであることを解説しました。
2枚落ちには優秀な定跡があり、それをマスターすることが攻略のコツと言えます。
今回は、2枚落ちの定跡の中でも定番と言える、「二歩突っ切り定跡」の手順をご紹介していきます。
定跡は、ただ手順を丸暗記するのではなく、1手1手の意味を理解しながら覚えていくと、定着が早まります。
3筋・4筋の位を取る
初手からの指し手
△6二銀▲7六歩△5四歩▲4六歩△5三銀▲4五歩(第1図)
第1図(▲4五歩まで)
初手は▲7六歩。
平手と同じく、角道を開いて活用を図るのは基本中の基本ですね。
二歩突っ切り定跡では、出だしから、▲4六歩~▲4五歩と、4筋の中段まで歩を進める(これを「位を取る」といいます)のが最初のポイント。
位を取ることには、
- 上手の金銀が盛り上がってくるのを防げる
- 将来、相手陣を攻撃する際の拠点となる
- 自陣の攻め駒(特に飛車・銀)の可動域が広くなる
などのメリットがあります。
上手としては、位を取られたくないため、途中の▲4六歩に対して△4四歩と突き返したいところです。
しかし、この場合は角が利いているので▲同角(参考1図)と歩をタダ取りされてしまいます。(初手に角道を開いておいた効果ですね)
参考1図(▲4四同角まで)
逆に、下手の▲4五歩が遅くなってしまうと、上手に失敗1図のように組む余地を与えてしまいます。
失敗1図
失敗1図と第1図を見比べると、第1図の方が上手陣に圧力がかかっている印象を受けませんか?
この感覚が大切です。
第1図以下の指し手
△3二金▲4八銀△5二玉▲4七銀△6四歩▲3六歩△6三玉▲3五歩(第2図)
第2図(▲3五歩まで)
4筋で取った位を安定させるため、下手は▲4八銀~▲4七銀と銀を前線に繰り出していきます。
前に述べたように、位を取ることは後の戦いを有利に進めるために下手が挙げた「ポイント」なので、これを簡単に失いたくはないのです。
位を失わないためには、その下に銀を進めて歩を支えるのが一般的です。
昔、対振り飛車の将棋で「玉頭位取り」や「5筋位取り」といった戦法が主流だった時代がありましたが、これもまさに位の下を銀が支えている形ですね。
セオリ―通りの指し方と言えます。
上手の駒組みは、平手の将棋に慣れている方だと「???」となるでしょうが、二枚落ちの上手では定番の陣形です。
下手が攻めてきそうなところ(3筋・4筋)から遠ざかるように玉を囲うのです。
続いて、下手は▲3六歩~▲3五歩と3筋の位も取りにかかります。
この定跡、4筋・3筋の位を取ってドンドン突いていくから「二歩突っ切り」と呼ばれているのです。
壁銀を強要する
▲3五歩とついた第2図で、上手はどう指してくるでしょうか。
第2図からの指し手
△2二銀(第3図)
第3図(△2二銀まで)
第2図では、次に下手から▲3四歩(参考2図)と突く狙いがあります。
参考2図(▲3四歩まで)
△同歩はもちろん▲1一角成と香車を取って下手優勢です。
この攻めに備える意味で、▲3五歩のときに上手は△2二銀と指す必要があり、第3図となります。
上手は、ただでさえ駒が少ない状況なので、できるだけ金銀を中央に活用していきたいのです。
しかし、下手が4筋・3筋の位を取り、角筋を通した攻めを見せると、不本意ながら△2二銀と上がらざるを得ません。
つまり、下手は上手に△2二銀の悪形(銀が壁のようになっている形で「壁銀」といいます)を強要した、と言えます。
まだ何も駒がぶつかっていない状況ですが、下手がポイントを挙げているのです。
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2枚落ちの「二歩突っ切り定跡」における序盤の駒組みのポイントを解説しました。
まとめると以下になります。
- ▲4六歩~▲4五歩と4筋の位を取る
- ▲4八銀~▲4七銀と位を支える
- ▲3六歩~▲3五歩と3筋の位を取る(角筋を活かした攻めを狙う)
- 上手に△2二銀の「壁銀」を強要させるのは下手にとってプラスになる
次回は、第3図からの続きの手順を解説します。
いよいよ駒がぶつかって戦いが始まっていきますので、次回もぜひご覧下さい。