将棋界の伝統・名人戦の歴史や仕組みを解説!

こんにちは。

日本将棋連盟公認「将棋普及指導員」のきゃべ夫です。

以前の記事で、プロの公式戦の中でも特に格式の高い「8大タイトル戦」についてご紹介しました。

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皆様こんにちは、将棋普及指導員のきゃべ夫です。以前、別記事でご紹介した通り、奨励会を卒業し「四段」に昇段すると、新聞社などが主催しているプロのトーナメント(=棋戦)に出場できるようになります。棋戦には、下図のような分類があります。[…]

今回は、将棋界の中でも最も伝統と格式が高いタイトル戦と位置づけられている「名人戦」について、詳しくご紹介していきます。

名人戦の基本データ

まずは、名人戦の基本的なデータを見ていきましょう。

特徴1:伝統と格式ある棋戦

名人戦は、現在行われている8つのタイトル戦で、最も古くからある棋戦です。

第1期が開催されてから80年以上が経過しています。

名人戦は、江戸時代、徳川幕府からの手厚い庇護を受けた「家元」の出身者が世襲した「名人」の系譜を継ぐ、伝統と格式のある棋戦なのです。

公式な席次は「竜王」が上とされているものの、400年以上の歴史を持つ「名人」に対して、棋士は皆、特別な思いを抱いており、名人になることはいつの時代でも棋士の最高の憧れなのです。

特徴2:二社共催

上の図を見て気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、2020年現在、名人戦は毎日新聞社と朝日新聞社の二社が共催する形となっております。

古くからある歴史の中で、名人戦の主催者は毎日⇒朝日⇒毎日⇒二社共催と、時代により変化してきているのです。

経緯は複雑で、とても個人ブログで書ききれる内容ではないので、興味のある方は野間俊克氏の「将棋400年史」を読むことをオススメします。

特徴3:挑戦には最短5年かかる

名人戦に挑戦するためには、「順位戦」と呼ばれるリーグを勝ち抜いていかなければなりません。
「順位戦」はC級2組からA級までの5階級。
最高峰のA級順位戦の優勝者が名人に挑戦します。
プロ棋士としてデビューすると、一番下のC級2組からのスタートになります。
そして、1年に1つずつしか上がることはできないため、名人に挑戦するためには最低でも5年かかります。
他の7つのタイトルは参加1年目の棋士から挑戦の可能性があることを踏まえると、名人戦に挑戦するハードルは8大タイトル戦の中でも最も高いと言えるでしょう。
きゃべ夫
実際、2019年度の棋王戦では参加1期目の本田奎四段(当時)がタイトル挑戦を決めて話題になりました。

特徴4:永世称号は「○世名人」

タイトル戦は、一定の期数を通算または連続で獲得すると、殿堂入りにあたる「永世称号」を獲得することができます(叡王戦を除く)。
他のタイトルの永世称号は「永世○○」や「名誉〇〇」ですが、名人だけは特別。
「○世名人」と呼ばれるのです。
名人戦は、通算5期獲得すると永世称号を獲得し、原則として引退後に○世名人を襲名できるようになります。
名人戦が開始して80年以上の歴史の中で、永世名人を獲得したのは以下の6名です。
  • 木村義雄 十四世名人
  • 大山康晴 十五世名人
  • 中原誠  十六世名人
  • 谷川浩司 十七世名人
  • 森内俊之 十八世名人
  • 羽生善治 十九世名人
家元制度で誕生した13名の名人の系譜を継ぎ、永遠にその名が語り継がれる棋士たちです。

名人戦のちょっとマニアなデータ

それでは、観る将の方に向けて、少しマニアックなデータをご紹介します。
名人の最多獲得・連覇、最多獲得は大山康晴十五世名人
昭和~平成初期の将棋界に君臨した巨匠です。
相手の攻めの種を丁寧に消していく「受けつぶし」で数多くの挑戦者を跳ね返してきました。
若いころは矢倉などの居飛車の将棋を指していましたが、その後は振り飛車党に転向。
大山流振り飛車は今なお、棋士やアマチュアの将棋に影響を与えています。
大山先生について知ってみたい方はこちらの本がオススメ。

 

 

きゃべ夫
この2冊は、何周読んだか覚えていないくらい読みました
最年少での名人獲得は谷川浩司九段の21歳2か月。
いまや「ひふみん」の愛称でタレントとしてお茶の間に親しまれている加藤一二三先生からの名人奪取でした。
それから30年以上経過した現在でも、この最年少記録は破られていません。
C級2組から毎年順調に昇級しても名人挑戦まで5年かかる制度下で、この記録を破るのは至難の業と言えるでしょう。
このときの谷川名人誕生は、子どもたちの間に空前の将棋ブームをもたらしました。
その時の子どもたちが、後の「羽生世代」として将棋界を席巻したわけです。
最年長獲得は米長邦雄先生の49歳11か月。
ライバルだった中原誠先生に何度も跳ね返され、7度目の挑戦にして悲願の名人位を獲得したのです。
この時、若手棋士に教えを乞い、自身の序盤戦術を一から見直したのは有名な話ですね。
少し昔の本ですが、「米長邦雄の本」は名人戦にかける米長先生の想いが色々と記されている名著です。
ちなみに、最多連勝は木村義雄十四世名人・大山康晴十五世名人の8連勝です。

藤井聡太先生の名人挑戦は最速でいつ?

多くの観る将の方が気になるのは「藤井聡太先生がいつ名人に挑戦するか?」でしょう。

藤井聡太先生は、2020年度はB級2組順位戦に参加しています。

仮に、ここから毎年リーグ戦で昇級・優勝を続けたとすると、最速での名人戦登場は2023年4月開幕の名人戦になります。

そのとき、2002年7月生まれの藤井先生は20歳から21歳に差し掛かるころ。

もしかしたら、20歳のうちに名人を獲得し、不可能と思われた谷川浩司名人の最年少名人獲得記録を更新するかもしれません

これから一度も昇級を逃せないという厳しい条件ではありますが、大偉業の達成成るか、今から期待が膨らみますね。

おわりに

今回は、将棋界で最も伝統と格式あるタイトル戦「名人戦」について詳しくご紹介していきました。

名人戦は、江戸時代からの将棋界の歴史が詰まった棋戦です。

その権威や伝統が、少しでも読者の皆様に伝わっていれば幸いです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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