将棋の「研修会」の棋力レベル・入会方法・費用・実際の様子を解説

この記事では、将棋の「研修会」の仕組みやレベル、実際の様子についてお話します。お子さまを研修会に入れたい保護者の方に向けた内容です。(2024年7月8日追記)
※研修会に所属するお子さんについては「研修会生」とする方と「研修会員」と呼ばれる方といらっしゃるので、どちらの呼び名が正しいのかライターにも不明です。こちらのサイトでは「研修会員」と表記しました。

研修会とは?
研修会とは、全国6か所(東京・大阪・愛知・福岡・札幌・仙台)に設置されている、日本将棋連盟管轄の機関です。役割は以下の2つ。
- 将棋を通じて健全な少年少女の育成を目指す
- 女流棋士の育成機関
それぞれについて解説します。
1:将棋を通じて健全な少年少女の育成を目指す機関
少し長いですが、要するに研修会は「将棋を通じた教育機関」のようなものです。そのため、プロ棋士を目指していないお子さんも入れます。
また研修会は、棋士の養成機関である「奨励会」の下部組織的な役割も持っています。
たとえば、研修会で一定のクラスに昇級すると、奨励会への編入や、奨励会試験の一部免除を受けられます。
2:女流棋士養成機関
2024年4月現在、研修会に在籍する女性がB1クラスまで昇級すると、女流2級としてプロデビューできます。
女流棋士になる方法は他にもありますが、今はほぼ全員が研修会経由でプロになっています。
研修会の仕組み:例会の対局でクラスが上下する
研修会には、レベル別の「クラス」があります。入会試験の成績によって、どのクラスに入るかが決まります。
最高がSクラス。以下、A1→A2→B1→B2、・・・と続き、いちばん下がF2クラスです。
研修会入会後は、毎月第2・第4日曜日に「例会」に参加し、ほかの会員やプロ棋士らと将棋を指します。その結果によってクラスが上下します。
具体的には、以下の成績を取ると1つ上のクラスにあがれます。
クラス | 昇級規定 |
A・Bへ | 8連勝、12勝4敗、14勝5敗、16勝6敗、18勝7敗 |
C・D・Eへ | 6連勝、9勝3敗、11勝4敗、13勝5敗、15勝6敗 |
F1へ | 5連勝、7勝3敗、9勝4敗 |
F2へ | 3勝3敗 |
1ヵ月に8局(4局×2回)指すので、連勝が続けば1ヵ月で上のクラスに上がることも可能ということですね。
なお、例会の結果は日本将棋連盟のWebサイトに公開されます。
※1カ月8局のうち、必ず1局は、奨励会員かプロ棋士の指導対局が入ります。
研修会に入会するタイミング
お子さんが入会したいと思ったタイミングで入会するのが、モチベーションを保つ上で一番良いですが、管理人の経験則的に以下のような状況ならば入り時、或いは入っても良い状態と言えると思います。特に②は重要です。
①地方在住で、自分と同等以上の棋力の子と対局する機会が限られている。
②(低学年以下のお子さんの場合)自分の棋譜をきちんと記憶して再現できる状態である。
研修会では将棋を教えてくれるわけではありません。後から対局を振り返るために、自分の棋譜を自力で残せることはマストです。
(楽しく通うだけでいいなら、棋譜を残せることはマストではありません。)
※棋譜は対局の待ち時間に自分で記録します。九州研修会のように、研修会の活動の一環で棋譜入力すると決まっているところの方が稀です。対局相手に手伝ってもらうことを最初から期待してはいけません。
研修会の入会方法
研修会は、随時、入会希望者を受け付けています。日本将棋連盟Webサイトからも申し込めますよ。
入会試験の内容は、例会に2回参加して研修会員(または棋士等)と将棋を指すというものです。計8局の結果によって、所属するクラスが決まります。
研修会のレベル
入会レベル(F2クラス)
日本将棋連盟によると、最も下のF2クラスで初段~二段程度の棋力が必要とされています。
実際に研修会員とよく対局している感覚で言うと、私は以下が1つの目安と考えます。
- 将棋ウォーズ:三段(3切れ、10秒)、二段(10切れ)
- 将棋倶楽部24:1,500点
町の道場や、コンピュータと指す将棋アプリでの段級は、あまり目安にならないこともあるのでご注意ください。
お子さまを研修会に入れたい場合は、近くの将棋教室・将棋道場に尋ねましょう。過去の事例から、お子さまが入会レベルに達しているか、見極めてもらえるはずです。
※入会試験を具体的に検討されている方は、日本将棋連盟の道場で棋力認定を受けることをお勧めします。テスト生にとっては「テスト」でも、相手の子には「例会での1局」となりますので、手合い違い(特にテスト生がかなり上手だった場合)は相手の子に迷惑をかけてしまう可能性があります。
女流棋士レベル(B1クラス)
女流棋士になれるB1クラスは相当強いです。(奨励会試験1次試験免除の棋力となります。)
将棋ウォーズ(3切れ)なら六段、将棋倶楽部24でも2,400点は必要です。
ネット将棋やAIの普及で、アマチュアのレベルはどんどん上がっています。今後はもっと厳しくなるかもしれません。
研修会の費用
研修会の入会~参加には以下の費用が掛かります。
- 試験料 21,000円
- 入会金 31,500円
- 月謝 12,500円/月
遠隔地にお住まいの方であれば、別に会場までの交通費もかかります。(※昼食は支給されますので、持参する必要はありません。)
決して安い費用ではありません。
在籍期間が長くなるほど費用もかさむので、入会試験を受けるタイミングは、お子さまの棋力や年齢を踏まえてご家庭内で検討されることをおすすめします。
※入会後、学校や家庭の事情などで、通えなくなることもあり得ます。その場合には、休会制度もあります。休会の申し込みは2カ月以上~となります。
それ以外は例会を休んでも月謝が発生しますので、ご注意ください。
実際の研修会の様子は?
では、気になる研修会の実際の様子は、どのような雰囲気なのでしょうか?
関西研修会の様子を収めた公式動画がありますので、ご参考までにご覧ください。
手合いの付け方や会場、昼食の準備など、幹事の先生方が大変細やかな気配りをされているのが分かります。
※事前申し込みをすれば、いずれの研修会でも例会の見学ができます。
東北研修会の様子についてはこちらをご覧ください。
椅子対局なので、関西とはまた違った雰囲気です。
また、他の研修会に比べて小規模な分、先生方の指導が行き届いている様子が分かります。
地域ごとに少しづつ異なる研修会
朝の座学
前述した関西研修会の動画では、朝礼の後に先生から研修会の子たちに詰将棋が出題され、勉強する時間が設けられています。手合い待ちの時間を無駄にせず詰将棋を解いているんですね。
東北研修会、九州研修会にも朝の座学の時間があります。内容は大盤解説や詰将棋です。
しかし、関東研修会、東海研修会にはこのような時間は有りません。
棋譜の管理
九州研修会では、手合い待ちの隙間時間を活かして、棋譜の入力を行っています。これは九州研修会独自の試みです。
※九州以外の研修会では、対局待ちの時間で各自管理します。ノートに書く、或いはタブレットやスマホなどで棋譜入力します。幹事は奨励会ほど電子機器の管理の仕方をうるさく注意しませんが、いらぬ疑いを持たれないよう、適切に管理しましょう。
対局室の様子
関東研修会は和室(正座)、東海研修会や東北研修会は貸し会議室(椅子)で対局しますので、これも大きな違いです。関西、九州研修会は和室と椅子対局の併用になっています。
手合い
東北、北海道など会員数が少ない研修会では、同じ棋力で手合いが付かない場合、オンラインで別な研修会の子と対局が組まれます。
※人数の少ない研修会では、お互いの手の内が良く分かるため、研究合戦になります。
開始時間
東海研修会は10時ですが、東北・関東は9時30分(振替9時20分)となっています。
開始時間が遅い方が、遠方からは通いやすいですね。
2つの研修会から等距離にあってどちらに通うか迷われる方は、このような各研修会の違いにも気を付けてください。
※研修会には振替制度というものがあり、都合により所属している研修会に参加できない場合、事前に幹事に連絡すれば、別な研修会に振り替えて参加することが出来ます。
例えば、関東研修会所属の子が、両親の帰省に帯同して大阪に行く場合は関西研修会に振り替える、大会で上京した子が関東研修会に振り替える・・・といったことが可能なのです。
まとめ
記事のポイントを整理します。
- 研修会は全国に6か所ある日本将棋連盟管轄の機関
- 研修会にはS~F2までのクラスがあり、例会での成績によって上下する
- B1クラスに昇級した女性は女流棋士になれる
- 入会は随時受け付けている。必要な棋力の目安は初段~二段くらい
研修会は同年代の将棋仲間がふえる刺激的な環境です。
プロを目指すお子さんや、強い仲間と切磋琢磨したいお子さんを持つ保護者の方は、ぜひ研修会を検討してはいかがでしょうか。
今回は以上です。
※研修会についてより深く知りたい方は以下の記事をご覧ください。

※別記事の親将ブログでは、現在活躍中のプロの先生方の研修会時代の昇級履歴が掲載されているものもあり、参考になります。

※奨励会受験の結果、不合格となった場合、流れで研修会入会される方も多いですよね。奨励会受験に関してはこちらの記事をご覧ください。
