【保護者向け】将棋の奨励会を受験するときの注意点
こんにちは。管理人のときんです。
今年も夏が近づいてきました。
夏と言えば、そう、奨励会試験の季節です。
奨励会を受験するには、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。
今回は、奨励会試験に関する内容をまとめてみました。
奨励会に興味のある方、奨励会を目指している方、今後入会試験を受ける方のご参考になれば幸いです。(※この記事では満15歳以下、6級受験を想定しています。)
※あくまで当サイトは参考情報として頂き、受験される場合には、必ず将棋連盟の最新の募集要項をご確認ください。
※2024年8月8日追記
奨励会員の棋力
プロ棋士になるための登竜門と言える奨励会。さすがに誰もが簡単に入会できるというレベルではありません。
1番下の奨励会6級で必要とされる棋力は、将棋連盟のサイトでアマ三~四段と言われていますが、実際のところ、青野照市先生の言葉を借りるなら、「五当四落」だそうです。
管理人の周りの奨励会員の方たちから得た感覚的な話ですが、24のレーティングで2400~2500、将棋ウォーズ3切で六段以上、81で六段以上、アマレンレーティングで2000以上が目安かと思います。
現5~6級の方たちの水準でまとめていますので、この項目の2つ以上満たしていれば棋力的には6級レベルにあると言えると思います。その場合、合格できるかどうかは試験当日のコンディションや運ということになります。アマレンレーティングについては、対局数が少ないと上振れしやすく、地域差もあるため、一概には言えません。
研修会に所属している子が受験した場合、俗にB1ならほぼ合格、C1が合否のボーダーラインと言われています。(B1=6級の想定)
(※B1の場合は一次試験免除となります。一次試験の有無、この差は大きいです。)
まれに研修会Dクラス以下でチャレンジする子もいますが、師匠によってはCクラス以上でないと受験を認めない方もいらっしゃいます。受験レベルに達しているのかどうかは予め指導者に相談することをお勧めします。
例外的にDクラス以下でも受験を認める先生もいらっしゃいますが、その場合、最悪のケースとして、6級入会→7級降級→退会→研修会に出戻りというコースを辿る可能性もあることに注意してください。
またA2以上で研修会から編入した場合、逆に棋力に若干余裕が生じるので、敢えてB1で奨励会を受験せず、研修会からの編入にこだわる子もいます。
例えば、奨励会員の棋力レベルが分かる話としては、2023年に四段昇段した宮嶋健太先生が挙げられます。
宮嶋先生は、小学4年で奨励会6級を受験、合格、入会したものの、7級降級となり退会。
その後小学5年で東海研修会C1に入会し、小学6年7月でA2昇級の後、8月に再び奨励会6級に入会をしています。因みに入会後2カ月で5級に昇級しています。
(C1→B2の期間が半年と短いので、相当な努力をされたものと拝察します。)
宮嶋先生の親御さんのブログに関しては別記事にリンクを貼ってあります。
受験の準備
受験を決めたなら、早めに準備に取り掛からなくてはなりません。中でも一番重要なのが、師匠に弟子入りをすることです。
①師匠に弟子を入りする
申込書には師匠の記名、押印が必要です。つまり、プロ棋士の方に師匠を依頼しなくてはなりません。赤の他人の身元保証をするのですから、大変なことだと思います。
研修会に所属している子は、幹事に直接師匠を依頼したり、師匠となる方の紹介をお願いすることが多いようです。
研修会に所属せずに入会試験を受ける子の場合には、地元の支部や道場の席主経由で紹介してもらう、連盟経由で同郷の先生等を紹介してもらうといった方法が考えられます。
先生によっては、入門する子の年齢制限を設けている方や、研修会の所属クラスの制限を設けている方(例 C1以上)、既にたくさんの門下生がいるためにキャパオーバーでお断りされる方もいらっしゃいます。この辺りも、事前にリサーチした方がいいでしょう。
②師匠への謝礼
師匠を決めるにあたって、師匠に謝礼をお支払いするのかどうかについては、依頼する先生によって対応が分かれます。
例えば主義として受け取らない方、受け取らないかわりに世話もしない(身分保証のみ)という方、料金表のある方、一律いくらと定めている方、決まった金額がないのでこちらが推し量ってまとまった金額を包んだ方がいい方・・・等々。
先生によってまちまちなので、紹介者に確認する方が間違いないでしょう。兄弟弟子がいれば、その方に確認する方法もあります。すでに先生と直接この話ができるような人間関係が醸成されているなら、直接尋ねるのもアリです。
もし稽古をつけて下さるような先生ならば、都度月謝を支払うわけではないので、その分の謝礼も含んで考えるのが筋かと思います。
③師匠は稽古をつけてくれるのか
これは師匠となった先生の方針によります。
全く指していただけない方、オンラインや対面で面倒見てくださる方、一門で定期的な研究会を開催する方等々様々です。
弟子入りする前に、兄弟弟子に先生の方針を確認する方がベターです。幸運にも指導して頂ける場合であっても、先生には先生の対局のための勉強時間が必要であることを念頭に置いて、常に謙虚な姿勢で臨みたいですね。
④提出書類
必要書類は以下の通りです。(将棋連盟ホームページより抜粋、一部追記)
学校の協力が必要な書類もあるので、夏休みに入る前に担任の先生に依頼しましょう。
(1)受験申込書(連盟所定のもの)※師匠の記名押印
(2)履歴書(市販のもの、顔写真添付)
(3)最終学業成績証明書
(在学中の方は前年度期末か今年度1学期の通知表、コピー可)
(4)健康診断書(学校の健康診断結果のコピー可)
https://www.shogi.or.jp/news/2023/06/2023.html
以上を師匠経由(持参または郵送)で将棋連盟に提出します。
※郵送の可能性も考慮して、師匠となる先生に書類一式と一緒に「連盟の宛先を記入した赤レターパック」をお渡ししておくとスマートかと思います。その時ラベルは本人の手元に残しておくと、後から送達状況をご自身で追跡でき、安心です。
⑤受験に係る費用
受験料は31500円です。
このほか、交通費、遠方からの場合は宿泊費、滞在費がかかります。
⑥服装
服装は襟付きシャツに長ズボン、または制服です。シャツは必ずズボンに入れます。
真夏で大変ですが、ハーフパンツ、素足はNGです。
高学年の場合、中学校の制服を前倒しで購入して対応する人もいます。
(※一次試験から受ける場合は着替えが3日分必要です。)
履歴書の写真撮影もあるので、襟付きシャツだけでも早めに用意しておくといいかもしれませんね。
⑦宿泊先の手配
遠方から受験する場合は、一次試験前日から二次試験の日まで4日間の宿泊先を手配しておく必要があります。
最近はかなりの数の外国人観光客が都内に宿泊しているため、都心部のホテルの予約が取りづらく、価格も高騰しています。こちらも受験を決めた段階で早めに押さえておきたいですね。
未成年の受験者だけで宿泊させる場合には、宿に保護者の同意書を提出する必要がありますので、ご注意ください。
コインランドリーのあるホテルにすると洗濯ができるので便利です。
また電車が不通の場合も考えてタクシーやバスで連盟に行ける宿がおすすめです。
<追記>試験直前期にやるべきこと
研修会の会場を関東・関西に振替える
研修会に所属しているお子さんの場合で、かつ関東、関西研修会以外の地方の研修会に所属している方は、7月の第二例会または8月の第一例会の会場を、受験会場の関東、関西の研修会に振替え、例会に参加することをお勧めします。
会場へのアクセス、連盟の対局室の雰囲気に慣れておくことが大切です。特に普段椅子で対局する研修会の方は、関東奨励会で受験する場合、試験当日和室で正座になるため、予め様子をつかんでおくと良いです。
例会の振替をするメリットはもう一つあります。7月、8月の例会は同じように多くの受験生が振替で地方から集まるため、受験生の情報を収集できます。一次試験から受験する方の場合、予めどの研修会からどのクラスの誰が受けるか知っておくことは大切です。
持ち時間に慣れておく
奨励会試験の持ち時間は60分、切れたら1手60秒。これまでのどの対局よりも長い持ち時間になります。できれば、どなたかに、事前に同じ持ち時間での対局をお願いできればベストです。
この持ち時間で対局するのはなかなか難しいという方、特に研修会に通ったことのないお子さんについては、せめて研修会と同じ持ち時間(30分、切れたら1手60秒)で事前に対局をしてみることをお勧めします。
将棋連盟までの経路を「複数」確認しておく
試験の時に初めて将棋連盟を訪れる・・・という方は珍しいかと思いますが、地方から受験する方の場合特に気を付けていただきたいのがこの点です。
関東に関して言えば、千駄ヶ谷駅のある総武線はもとより、都心の大動脈である山手線、中央線はかねてより人身事故や車両故障等のトラブルが多いうえ、新幹線のトラブルも頻発しています。鉄道を過信せず、バスやタクシーなど他の交通手段を確認しておくことで、万が一の時に慌てずに済みます。
直近では2024年8月4日の関東奨励会例会日に、車両故障のため、総武線が千駄ヶ谷を含む一部区間で上下線ともに不通になっていました。(幸いにも午後の時間帯でした。)試験日に何事もトラブルが無いことを祈るばかりです。
保護者の待機場所にめどをつけておく
研修会同様、保護者の待機スペースはありません。数日間、朝8時半~16時、17時までと非常に長い時間待機する必要があります。将棋会館の下で待つ保護者の方もいらっしゃいますが、大会の時のように皆さんで気楽に話せる空気ではありません。心穏やかに過ごせる場所にめどをつけておくことお勧めします。
試験にあたって
①試験内容
一次試験は受験生同士の対局です。2日間で最大6局対局します。うち3勝合格か4勝合格なのかは年によって異なりますが、近年は4勝合格が多いです。
残酷ですが、初日に3敗してしまうとそこで試験は終了です。
毎年初日に数人が脱落します。
そして試験2日目の1局目、2局目と3敗した人がぽろぽろと抜けていきます。
二次試験は現役奨励会員との対局となります。3局対局、1勝で合格です。
6級と当たることが多いのですが、例会と同じ扱いになるので、まれに5級、7級との対局もあります。その場合受験生(=6級)は、前者なら香落ち下手、後者なら香落ち上手を持つことも有り得ます。(上手香落ちか後手番かは振り駒で決まります。)
二次試験は相手の奨励会員にとって「例会の一局」です。
何をお伝えしたいのかというと、明らかに格下と推定される受験生の場合(研修会でB未満)は、奨励会員にとって勝ち星を稼ぐ絶好のチャンスなのです。昇級がかかった一番かもしれません。
試験官になった奨励会員のモチベーションは非常に高いです。一次試験に合格したからといって気を抜けない理由はここにあります。
※このほか面接があります。なお筆記試験は無くなりました。
②一次試験免除
研修会B1以上、既定の大会(※)で優勝した場合は一次試験免除となります。
(※小学生名人戦、倉敷王将戦、中学生名人戦、中学生王将戦、中学選抜)
倉敷王将戦(全国)の様子については別記事でまとめました。
③集合時間など
8時半集合、9時対局開始となるため、遠方から参加する場合は前泊が必要です。
(当たり前のことですが、遅刻は厳禁です。特に二次試験に関しては対局相手にとって例会の1局です。)
④持ち時間
持ち時間は60分、切れたら1手60秒。
普段のどの大会よりもはるかに長丁場の将棋になります。
⑤礼節
関東奨励会は和室で正座の対局になります。正座が苦手であっても、開始時と終了時には必ず居ずまいを正すようにします。(開始早々に足を崩すのはNGです。)
⑥ルール
※持ち時間、礼節、ルールについて、詳細は別記事でまとめておりますので、そちらの方もご覧ください。
⑦合否
一次、二次共に、対局がすべてなので、受験生本人には通知するまでもなく分かります。(落とすための試験ではないので、面接で落ちることはほぼないという想定です。)
では、他の受験生の合否を知りたい場合はどうすればいいのでしょうか。
二次試験翌日か翌々日には、奨励会の手合い表が更新されますので、そちらを見ればわかります。二次の対局者に名前が無ければ一次で残念、二次の3局でどこかに白星があれば合格です。
最後に
今回は、奨励会試験について、注意点と管理人なりのアドバイスをまとめてみました。
受験する方は、余裕を持って準備して、万全の態勢で挑みたいですね。
受験生の皆様の合格を祈念しています。