あの藤井聡太も苦戦した!?奨励会の「香落ち」とは?

こんにちは。管理人のときんです。
藤井聡太先生がいよいよ八冠となって、将棋界のみならず、日本中が藤井フィーバーに沸き返っていますね!
さて、現時点で藤井聡太先生が最強であることは疑いの余地が無いのですが、果たして藤井先生に「弱点」はないのでしょうか?
今回は藤井先生の「弱点」と思われる「香落ち」についてスポットを当ててみます。
将棋について、少し深く知ったかぶりできる?内容になっていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
はじめに
師匠・杉本先生の話では藤井先生は「飛車を振らない」そうです。これはひょっとして、ひょっとしたら、振り飛車が「苦手」なのでは・・・?
「自分が飛車を振るとさばけないので」
「飛車を振るとさばけないので…」絶対に飛車を振らない天才・藤井聡太の師匠が“振り飛車党”になったわけ | 観る将棋、読む将棋 | 文春オンライン (bunshun.jp)
そもそも藤井先生は生粋の居飛車党。振り飛車には無縁なはずと思われる方も多いかと思います。
ところが、居飛車党であっても、必ず飛車を振らざるを得ない状況があります。
それは「香落ち」。「奨励会の最大の難関」です。
どうして居飛車党にとってこの問題が「弱点」となるのでしょうか。
というわけで今回は、居飛車党である藤井先生の「弱点」と推測される「香落ち」について、定跡の伝道師・所司門下にしてアマ強豪の鈴木肇さんにお聞きしました。
(※キノコは関係ありません。)

鈴木 肇
元奨励会三段。将棋講師。第32期全国アマ王将、第72回全国アマ名人ほか、数々のアマ大会で優勝実績あり。
現在は主に「はじめ将棋教室」、「青葉はじめ将棋教室」、「両国将棋塾」講師として指導に当たる。 棋書執筆、漫画の棋譜監修、Youtuberなど多方面で活躍中。
はじめちゃんねる
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棋士中村太地はじめちゃんねる
<鈴木肇さん解説>奨励会の「香落ち」とは?
奨励会には、鬼門とされてるハンデ戦がある。
三段リーグに入るまでは段級制度で2階級差までの対局があり、
- 1階級差の場合は、振り駒をして平手で先手を得るか、左香落ちになる。
- 2階級差の場合は、上手が必ず左香落ちで指すことになる
という駒落ち戦である。
それが実践的にどうなるかというのが以下の局面である。

(局面1)
よく言われていることは、振り飛車党は香落ちが得意、居飛車党は苦労するという話だ。
何故かというと 上手は左の香がいないので、大切な王様を防御力の弱い左に囲うわけにいかないからだ。

(局面2)
そうなると 必然的に弱点を補うために飛車を左側に振り、王を戦場(飛車)から遠ざける戦い、つまり、振り飛車になりやすい。
故に振り飛車を指せないと奨励会を突破することは難しい。
そもそも居飛車党にとって振り飛車が苦手となるには感覚的な違いがある。
どうやら、居飛車党には、「捌く」という「駒を捨てる感覚に抵抗がある」ようなのだ。
(※捌くとは、駒を損して、駒の効率をよくするということ。)
居飛車党は現実主義者(駒の損得勘定重視)で、振り飛車党は「期待値」をとる将棋を指す(駒の損得勘定より駒を捌くことでこの先得られる効率性と形勢見通しを重視)、とでも言おうか。
両者の感覚には埋めがたい大きな溝があるのである。
一方で、このハンデの面白い所はバランスが絶妙なところである。
将棋ソフトがない時代、筆者は一時期、上手が有利説を唱えることもあったくらい差がわからなかった…。
定跡本に書いてある昔ながらの香落ちの定跡が、奨励会の世界ではあまり通用しないのだ。
それは何故か?

(一例)
上手が当然対策をして「罠」を張っているからである。
「罠」とは即ち上手の「研究」である。
香落ち下手は定跡をなぞる戦いを進めようとするが、その戦いの随所にわたって、上手は下手よりさらに深い定跡理解の上に、自身の研究を蓄積して、網を張って待っているのである。
当然、良い勝負になれば上手側は自分が勝つように準備をして将棋に臨んでいるし、かなり厳しい手合になる。
研究で下手を捕らえる上手にせよ、上手の研究をかわさなくてはならない下手にせよ、香落ちを支配できるものが奨励会の6級〜二段を駆け上がっていけると言っても過言ではない。
奨励会で勝ち上がるには香落ちの研究が重要なのである。
香落ちを支配する要ともいえる「振り飛車のセンス」についてはこちらをご覧ください。
まとめ
奨励会の「香落ち」がなぜ重要か、そして、なぜ居飛車党にとっての難敵なのか、お判りいただけたかと思います。
純粋居飛車党の藤井先生にとっても、独特のセンスが必要とされる振り飛車を習得するのはたやすいことではなかったはず・・・
では、実際のところ、奨励会や研修会での成績はどうだったのでしょうか?
これについては、また別な記事で触れたいと思います。(続く)


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