将棋界の最高峰・竜王戦の対局料やトーナメント方式を詳しく解説!

こんにちは。

日本将棋連盟公認「将棋普及指導員」のきゃべ夫です。

以前の記事で、プロの公式戦の中でも特に格式の高い「8大タイトル戦」についてご紹介しました。

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皆様こんにちは、将棋普及指導員のきゃべ夫です。以前、別記事でご紹介した通り、奨励会を卒業し「四段」に昇段すると、新聞社などが主催しているプロのトーナメント(=棋戦)に出場できるようになります。棋戦には、下図のような分類があります。[…]

今回は、その中でも最高峰のタイトル戦と位置づけられている「竜王戦」について、詳しくご紹介していきます。

竜王戦の基本データ

まずは棋戦の概要をみていきましょう。下の図をご覧ください。

竜王戦は、前身の「十段戦」を発展的に解消し、1987年より開始した棋戦です。
(七番勝負が初めて行われたのは1988年)

将棋の駒の中でも最強の「竜王」(飛車が成ったもの)などにちなんだ棋戦名で、将棋界最高峰の棋戦名にふさわしい、かっこいい名前です。

特徴1:将棋界最高の賞金額

竜王戦は、8大タイトル戦の中で最も賞金が高い棋戦です。

優勝賞金はなんと4,400万円。

扇子くん
竜王1期で家が買えちゃいますね…
賞金額の高さにしたがって、「竜王」8大タイトル戦の中では最も序列が高い(≒偉い)とされています。
ただし、将棋界で最も長い伝統を誇る「名人」への敬意を払う形で、序列には少し複雑なルールがあります。それはまた別の機会にご紹介します。
きゃべ夫
竜王・名人は8大タイトルの中でも別格、くらいにイメージしていただければ、観る将的には問題ありません。

なお、竜王戦は賞金以外にも決勝トーナメントなどの対局料も一部公開されています。

日本将棋連盟のHPを眺めてみて妄想するのも楽しいです。
(参考:日本将棋連盟 竜王戦のページ

特徴2:独自の対戦方式

竜王戦は、独自のルールでクラス分けした「ランキング戦」と、「ランキング戦」の成績優秀者で行われる「決勝トーナメント」を経て挑戦者を決定します。

そして、毎年秋頃から竜王と挑戦者が七番勝負を行い、先に四勝した棋士が「竜王」となります。

今お話しした仕組みを図にすると下のようになります。

順に詳しく説明します。

ランキング戦

1~6組の6クラスに分かれて行うトーナメント戦です。

1組が最もレベルが高いクラスで、ここに昇級すると七段に昇段できる規定もあります。

1~5組は定員制(1組~3組:16名、4組・5組:32名)で、6組はそれ以外の棋士全員です。

各クラスの上位入賞者が、決勝トーナメントに進出できる仕組みになっています。

実力者がひしめく最上位の1組では5名が決勝トーナメントに進出できる一方、プロデビューしたばかりの若手が多く所属する6組は、60名程度の中から優勝者1名しか決勝トーナメントに進出できない狭き門です。

また、竜王ランキング戦には昇級・降級の仕組みがあります。

2~6組では、各組の優勝者・準優勝者、および敗者復活戦(昇級者決定戦といいます)を勝ち上がった棋士が上のクラスに昇級します。

降級は組により異なりますが、例えば1組では2連敗するとその時点で2組降級が決定する厳しいルールになっています。

決勝トーナメント

ランキング戦を勝ち上がった11名の棋士により行われるトーナメント戦です。
このトーナメントの優勝者が竜王戦の挑戦者となります。

王位戦七番勝負と並び、将棋界の夏の風物詩として将棋界を盛り上げているトーナメント戦です。

もう一度、トーナメント表を見てみましょう。


扇子くん
1組優勝者、めっちゃシードされてるやんけ!!
サッカーの国見高校かと思いましたよ…
きゃべ夫
ランキング戦1組は、A級棋士やタイトル経験者がひしめく超ハイレベルなトーナメントなので、その優勝者は大きくシードされているんです。
5・6組の優勝者は、挑戦者決定戦までに5勝が必要な一方、1組優勝者はベスト4にシードされており、1勝すれば挑戦者決定戦に進出できます。
4~6組を優勝した若手棋士がトーナメント戦を勝ち進むことも多いのですが、挑戦までに1組の棋士を3名以上破らないといけないという壁は途方もなく厚く、今のトーナメント形式になってからは、4組以下の挑戦者は現れていません。
なお、竜王戦の挑戦者決定戦は三番勝負で行われます。

七番勝負

決勝トーナメントを勝ち上がった挑戦者が、時の竜王と七番勝負を行い、先に四勝した棋士がその年の「竜王」となります。
七番勝負は、全国各地の名旅館などで行われます。
不定期で海外対局も行われています。
なお、七番勝負は持ち時間8時間の2日制で行われます。
1局の持ち時間としては、名人戦七番勝負の9時間に次ぐ長さで、非常に濃密な対局が行われます。

特徴3:竜王戦ドリーム

竜王戦はプロ1年目の棋士から挑戦の可能性がある棋戦です。

最近では、トップ棋士の厚い壁に若手が阻まれる場面が多いものの、以前は竜王戦をきっかけに一気にスターダムに昇り詰める棋士が多く「竜王戦ドリーム」という言葉もあります。

そうした「竜王戦ドリーム」を魅せた棋士を何名かご紹介します。

羽生善治九段

史上3人目の中学生棋士としてプロデビューして4年。
羽生善治九段の初タイトルは竜王戦でした。

第2期竜王戦でランキング3組から挑戦権を獲得。
研究会の仲間でもあった島朗竜王をフルセットで破り初タイトルを獲得したのです。

その後も通算で7期竜王を獲得しています。

最初の竜王獲得までの棋譜は、「羽生善治全局集」の1巻に全て収録されています。

将棋ファンなら、ぜひ盤に並べてほしい1冊です。

藤井猛九段

第11期竜王戦(1998年度)で、4組から挑戦権を獲得。
挑戦者決定戦では、ずっと背中を追っていた同世代の羽生先生を破りました。

七番勝負でも勢いは止まらず、自身が編み出した戦法「藤井システム」を駆使して当時の谷川浩司竜王を4-0で圧倒。

一気にトップ棋士の仲間入りを果たし、その後竜王戦では初となる3連覇を達成しました。

きゃべ夫
私が小学生の頃は藤井竜王の時代。その影響か、四間飛車を指す子どもが本当に多かったです。

 渡辺明二冠

竜王戦と言えばこの方ですね。
第17期竜王戦(2004年度)で、4組から挑戦権を獲得。
当時の森内俊之竜王を相手にフルセットで竜王を獲得すると、そのまま9連覇。
他棋戦でも勝ちまくっていますが、竜王戦にかける想いは特に強く、数々の名勝負を繰り広げてきました。
現在まで竜王獲得は全棋士中最多の11期。

今でも竜王=渡辺先生のイメージは強く、竜王戦七番勝負の檜舞台への復活が期待されています。

永世称号

「永世称号」とは、スポーツでいう殿堂入りのようなもので、その棋戦で活躍した棋士の名誉を称えるための制度です。
竜王戦では、連続で5期または通算7期獲得すると、引退後に「永世竜王」を名乗る資格を得ます。
2020年7月現在、永世竜王の有資格者は渡辺明先生・羽生善治先生の2名です(資格獲得順)。
2008年に行われた第21期竜王戦は、連続4期防衛していた渡辺明竜王に、通算6期獲得していた羽生善治名人が挑戦したシリーズでした。
つまり、七番勝負に勝った方が初代永世竜王を獲得するという、空前絶後の大勝負だったのです。
100年に一度のタイトル戦と言われ、いまだに語り継がれています。
このシリーズを語るだけでも相当なボリュームになるので、それはまた別の機会にしますが、詳しく知りたい方は、初代永世竜王の渡辺明先生著「永世竜王への軌跡」がオススメです。

また、少しマニアックな話ですが、この第21期竜王戦の第6局・第7局では連続して「矢倉5三銀右急戦」という戦法が現れました。
村山慈明先生の「矢倉5三銀右急戦」に、この竜王戦の件も含め、変化手順が詳しく書かれておりますので、興味がある方はぜひこちらも読んでみると良いでしょう。

竜王戦のちょっとマニアな知識

観る将の方に向けて、少しマニアックなデータもご紹介します。

下の図を見てください。



竜王戦の各種記録は、だいたい羽生善治先生・渡辺明先生のお二人が作っています。

最多獲得・連覇はともに渡辺明先生。

2004年の衝撃的な竜王奪取から一気に9連覇。

今でも竜王と言えば渡辺明先生のイメージが浸透しています。

最年少・最年長での獲得はともに羽生善治先生。

第一線でいかに長く活躍しているかが分かりますね。

七番勝負での最多勝利・最多連勝はまたまた渡辺明先生。

相手も一流棋士ばかりの番勝負で10連勝はすごいの一言ですね。

なお、竜王戦七番勝負については、第1期~第32期までの棋譜を収録した全集が発売されました。

棋界最高峰の棋戦の戦いを振り返りたい方は必携の一冊です。

おわりに

今回は、将棋界最高峰のタイトル戦「竜王戦」について、詳しく説明して参りました。

羽生善治九段VS丸山忠久九段による挑戦者決定戦は1勝1敗で最終第3局に。

果たしてどちらが豊島将之竜王への挑戦権を獲得するのでしょうか。

9/19(土)に行われる挑戦者決定戦第3局は目が離せませんね。

他のタイトル戦についても下の記事にまとめていますので、ぜひ読んでいただけると嬉しいです。

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